美しい、と口に出して言うのは、この棚の前だけですよ。
負けてはいけない理由が、最初から全部揃っている。守るべき仲間、掲げた正義、預かった機密——敵の女に膝をつくというのは、そのすべてを同時に手放すということでしょう。しかも折られる手口が、色仕掛けなどという最も安いもの。剣でも策でもなく、ただ甘い声と柔らかい体で、正義の側が裏切りへ、破滅へと運ばれていく。高いところにいた者ほど、堕ちる音は綺麗に響くのです。
『
悪の女幹部クエスト0 ~ヒーローが女幹部に勝てない理由~』は、その落ち方を貴方自身の手で選ばせてくる。この棚には遊ばせる形の作品が他所より目につくのだけれど、当然ですよ。他人の敗北を眺めるより、自分で選んだ敗北のほうが甘いに決まっている。『
雑魚サキュバスに誘惑されて最強の勇者は堕とされる~レベルドレイン気持ち良いよ~』のほうはもっと残酷。積み上げた強さを、格下の女に一滴ずつ抜かれていくだけ。逆転は、用意されていません。
……ねえ、貴方は今、どちら側で読んでいたのかしら。ええ、分かっています。分かった上で、聞いてあげているのですよ。