私がこの棚を可愛がっている理由を、一つだけ話してあげましょう。裏切りそのものには、実のところ大した価値はありません。美しいのは、貴方が自分から差し出した信頼が、そっくりそのまま首輪の材料に作り替えられていく、その手際なのです。人は他人に奪われたものでは壊れません。自分で選んで渡したものでしか、綺麗には壊れないのですよ。だからこの棚の周りには破滅や貢ぎ、敵の女といった札が寄り集まり、色仕掛けの気配が常に漂っている。優しくされて緩んだところを狙うのが、一番効率がいいのですから。
『
嘘つき後輩の好き好き精神支配』を私が手放せないのも、そこです。指一本触れられないまま、嘘の「好き」だけで果てさせられて、直後に「ぜんぶウソですけど♪」と突き放される。触れられていないぶん、逃げ場がないでしょう。堕ちた責任が全部、貴方の心の側に残るのですから。『
【囁き誘惑】慈善団体の怪しいお姉さんに洗脳させられて、人生破滅するお話【KU100】』のほうは、癒しの名目から入信、洗脳、搾取と、階段を一段ずつ下りさせる作りが上品でよろしい。人は坂では気づかないのです。
……安心なさい。私は最初から本性を隠していません。貴方がそれでも足を止めてこの棚を眺めているという事実のほうが、よほど美しいと思っていますよ。