この棚の前で立ち止まる方は、不思議と揃って同じ仕草をなさるのですよ。端のほうから入って、興味などないという顔で背表紙を撫でて、それでいて足だけが動かない。ええ、貴方も今そうしていらっしゃる。
皆さま、口実がお好きなのですね。相手が女神や女王や、人ならざる王ならば、負けても仕方がない。抗えるはずがなかったのだから恥ではない——その理屈をここへ探しに来る。『
あなたは人類保全のための実験サンプルに選ばれました 優しい上位存在さんに完全拘束されて永遠に搾精される音声』などは、題の時点で貴方たちに親切でしょう。自分で望んだのではなく、選ばれてしまった。拘束されて、優しく感度を測られて、止めてもらえないだけ。よくできた言い訳ですこと。
そんな顔をなさらないで。私はその浅ましさを咎めているのではなく、可愛いと申し上げているのです。この棚には珍しく、自分の足で逃げ回れるものも並んでおります。今夜は『
サキュバスプリズン~淫魔の巣食う一軒家~』をお貸ししましょう。あの家では、見つかるまでの時間だけが貴方のものです。息を潜めて廊下を進みながら、心のどこかで見つかりたがっている自分に、そろそろ気づいておしまいなさい。